115日目
私は7:10頃起床。昨夜は2:00頃就寝。Webサイトの作業をしていて寝るのが遅くなった。
奈津子は5:45頃起床。昨夜は21:30頃、鎮痛剤を服用し就寝。1:00頃、トイレに行った。2:00頃まで、ぼんやり起きていて、鎮痛剤を追加して服用、ホットパックももらい、眠った。だいたい2時間おきに目が覚めていたようだが、このひと月の間では、よく眠れたそうだ。
午前中は理学療法から。最初にストレッチをし、体幹強化をした。次に電極をつけて病棟内で歩行訓練。右足の動きが好調で、廊下の床と靴が、以前より擦れなくなったことを実感したそうだ。理学療法士も「右足の運び方が上手になった」と評価したようだ。最後に肩のマッサージを受けた。
作業療法では、「痛み日記」のタイピングをし、コインを使った手の運動をした。
奈津子の昼ご飯は素麺だった。「天ぷらの揚げ方が、だんだん上手になってきたね。美味しく全部いただきましたよ」と奈津子。
午後は理学療法から再開。少し右の肩と腕に違和感があったので、マッサージをしてもらった。少し回復したそうだ。次に装具を外し、靴下だけの状態で、マットの上で前進、後進の歩行訓練をした。装具を外した訓練は、たまにあったが、こういった訓練はあまりしていなかったそうだ。現状、装具を外すと、右足はつま先から着地するようにしか歩けない。歩き始めは、つま先だけついて歩行していたが、意識的に矯正し、離陸前に踵も着地して歩くことが出来るようになった。その後、装具を再び装着し、階段昇降の練習と後進歩行の練習をした。担当してもらった理学療法士は、以前、奈津子に姿勢を正しくすること、体幹強化を重視することを指摘してくれている。今日は、「だいぶ体幹が強くなっている、力がついてきたね」と褒められたらしい。奈津子は今日、ペダリングをするのを忘れてしまったそうだ。
作業療法では、腕や手首を伸ばす方向でのマッサージをしてもらった。次に、おはじきや、ビーチボール、ネジ切り棒を使った訓練をした。最後に「もぐら叩き」と呼ばれる装置で、ボタンを押す訓練をした。
ここ数日、奈津子の顔に変化を感じていた。肩と腕の痛みで調子を落としてからその傾向はあったが、左口角が少しずつ上がってきている。それが一段増している。今日のお昼に個室の外から窓越しに見た顔は、左の眉が結構吊り上がっているように見受けられた。ただ、奈津子自身、頭部に疲れや痛みといった自覚症状はない。見る限り、眉間にしわが寄っている訳でもない。肩や腕以外、何も問題は無いのだが、顔を見るとやはり仮説のことを考えてしまう。しかし、その変化から、今どういった状況にあるのか、私には想像できなかった。
夕方、晩ご飯のデリバリー後、奈津子に会うため車を個室脇に停めた。奈津子は元気そうに手を振ってくれた。「あれっ」と思うほど、昼間に見た顔と違って見えた。帰ってからLINEで撮った写真で見るとやはり左右差はあるが、落ち着いている。そして、肩と腕の調子も悪くないと言う。
脳には、感覚を感じとる「感覚野」と運動を指令する「運動野」があり、それぞれが体の部分と密接につながっている。五指と掌は、運動野で約1/3、感覚野で約1/4を占めていると言われている。手だけで考えても、その感覚と運動が脳に与える影響がとても大きい。右肩から伸びる腕、手、指を積極的に動かし始めている今、障害となる痛みが少しずつ解消されつつある。
リハビリ時間の大半を回復に充てていたが、それが今後、具体的な動作、運動に費やせることになる。折り合いの付かなかった、肩、上腕付近の筋肉へ繋がる神経回路の協調が進みつつある。痛みによる負のスパイラルから脱却する。今、重たい扉が開錠され、ゆっくりと渋い音をたてながら、開きはじめているのかもしれない。
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奈津子の朝昼晩ご飯
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