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72日目

  • 私は6:00頃起床。昨夜は0:30頃就寝。

  • 奈津子は6:00頃起床。昨夜は22:00に就寝。2:00頃一度トイレに起き2:30頃再就寝。

  • 朝ごはんは少し米飯を残した。お昼ご飯の冷凍の汁なし担々麺はあまり食が進まなかった。「その代わり晩ご飯は完食したんだよ」と奈津子は自慢げに言っていた。

  • 自販機でドリップのアイスコーヒーを飲んだ奈津子は、「初アイスコーヒー美味しかった」とLINEに写真付きで書き込んでいた。まともに一杯のコーヒを飲んだのは入院以来だ。

  • 理学療法の時間は、ここのところ毎日30分ほど多めに診てもらっているようだ。回復期の伸びしろに主治医や理学療法士が期待を持って臨んでくれていることが窺える。

  • 歩行訓練ではここのところ左足のつま先、踵を上手に突くことを意識的にしていたが、その分右の足運びが疎かになっていると指摘されたようだ。左右交互に足を運ぶ際、踵の着地からつま先で離陸するまでの時間が右が短くなっていると。通常なら同じ時間で交代するが、左足でかばっている分、それが長くなっている。今日は右足に体重をしっかり乗せることを意識し、時間配分をなるべくイーブンにするよう心掛けた。奈津子的には右足に体重を乗せている感覚が増したらしい。

  • 今日は病室に主治医が訪れて「伸びしろがあるうちは入院を継続してリハビリに励んだ方がいいと考えている」と奈津子に話してくれたそうだ。それはその通りだと奈津子も私も思う。

  • 言語聴覚の時間、今日もテストがあった。時間は30分程度。何かを認識・記憶し、タイミングやトリガーを条件付与され、与えられたタスクを実行する。記憶の対象が、人の名前、人の顔写真、物・動物などの絵が描かれたカードなど、その対象の記憶を保持し、ほとんどのタスクは実行出来たそうだ。ただ「一つだけ出来なかったのが悔やまれる」と奈津子が残念がったタスクがある。「20分後に次回の言語聴覚のリハビリの時間割を私に聞いてください」という内容をタイマーを20分後にセットしながら言語聴覚士が指示した。奈津子は他のタスクに注力している間に「20分後に何かをする」ことは覚えていたが、何をするかを忘れてしまったそうだ。

  • タスクを実行出来た部分は、多分右脳が中心に記憶・処理出来ることだったと私は推察する。このテストは、まあまあ多い数のタスクを言い渡される組付けなのだろう。人間は、わちゃわちゃすると慌てたり、記憶が飛んだりするものである。私がもし同じテストを受けても奈津子ほど出来ないかもしれない。正直あまり自信がない。

  • テストの視点としては、短期記憶、イメージ記憶、論理記憶、言語記憶、両側脳の連携といったキーワードが内在されていると私は考える。多分、奈津子が出来なかったのは言語記憶と両側脳の連携付近。

  • 私はかつて、Webサイトの管理をする仕事をしていたことがある。その際、サイト構築において「マジカルナンバー」とか「チャンク」といった概念を念頭に作業を進めていた。多くの人の認知と短期記憶の有りようを意識して、視点移動や選択肢が悪戯に増えないよう配慮するのだ。これは脳科学というよりは心理学的なものの考え方である。

  • 例えば、自分の郵便番号とか携帯の電話番号、今はもう使わなくなった、かつての職員番号、学籍番号などを私は記憶している。私はそれを音でイメージ記憶している。ハイフンで区切られた、4桁までの数の塊「チャンク」をギュッと焼き付けている。どこでそれを保持しているかというと右脳になるのだと思う。

  • 同じような物の記憶として上げられるのは、受験勉強した時の元素記号表とかイオン化傾向や炎色反応の語呂合わせや円周率など、個々のチャンク自体に意味を持たない状態で丸っと覚えていたりするような記憶である。

  • ここで、奈津子が言語聴覚士に言われた「次回の言語聴覚の時間割を聞く」というタスクを処理する道のりを考える。その行程は「言語聴覚士の音声を認識する:右脳」→「言語化する:左脳」→「右脳に焼き付けられる形に変換する:両脳」→「記憶を保持する:右脳」→「聞くために発話するための言語を生成する:左脳」→「言語化された発話内容を発声する:右脳」みたいに両側脳をつなぐ脳梁を行ったり来たりしている筈だ。

  • 例えば郵便番号を何かしら書類に記載する際、音を一回記号化して、利き手を動かしペンを走らせている。行為としては右脳から情報を引き出して、左脳で記号化するので、ぼやっとしてると、もたつくことがあったりする。

  • 健全な脳なら、無意識にこれが出来る。奈津子は今、左脳のパフォーマンスが万全ではない。それだけでちょっと不利な状態だ。

  • 前の病院の主治医は「損傷箇所は左脳の運動野に丁度かかっていてオンライン上」と言っていた。ここで私が心配しているのは「運動を司っていない左脳損傷箇所が、もしあったなら」という点だ。

  • もしあったなら、それは多分、右脳が機能代替していることになる。名目上は左脳の仕事だが右脳が肩代わりしているのだ。そうなると名目上の左脳と右脳の情報のやり取りの物理的経路がその直線距離が短い分、遠大な道筋を辿ることになりはしないのか。

  • 画像診断でこれとわかる虚血による損傷だけが問題ではない。フリーラジカルや浮腫により活動を終えたニューロンがあっても不思議ではないからだ。その液晶のドット欠けのような小さなニューロンの役割が実は重要なものだとしたら。

  • これは私の考え過ぎなのかもしれない。考えすぎであって欲しいとも思う。

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奈津子の朝昼晩ご飯







 

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73日目

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