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49日目

  • 執筆者の写真: 筆者
    筆者
  • 2022年6月13日
  • 読了時間: 6分

更新日:2022年10月2日

  • 私は今朝4:30頃起床。昨夜は奈津子からの宿題をこなすため遅くまで起きていた。

  • 奈津子は6時45分頃起床。昨夜は23:00就寝。一度トイレに起きたが30分程度で再度就寝。最初の睡眠の際、上手く寝付けなく、早々に睡眠薬を貰って飲んだそうだ。

  • 私は、奈津子の装具について、ずっと疑念を持っていた。奈津子はリハビリのある時間は、26cmの足用の大型装具をつけ訓練していた。足のサイズがあまりにも合わないためタオルなどで固定していた。そして、ベットで睡眠をとる時以外は、別に貸与された普段履き用の装具をつけていた。そのサイズも26cmの足用の装具だ。

  • この普段履き装具を履いた奈津子を見かけるたびに、私は心を痛めていた。「なぜ、それを履かなければいけないのか」と思った。40日目くらいに「おかしい」と気づいた。

  • 奈津子の足のサイズは23cm。装具の大きさとは3cmの乖離がある。踵を装具の踵の位置に合わせるため、つま先を上げる形、逆傾斜を付けるように、テープなどで調整したその装具。38日目に貸与されたそれをずっと使い続ける理由が私には理解できないでいた。しかも、履いている靴も介護用のソールの厚い大きなものだ。実際のつま先の2.5cm程先、3cm程下に靴のつま先がある。左足には履きなれた23cmの靴を履いている。右足の持ち上げ開始する高度が高くなり持ち上げが悪くなる。歩行の際、右足の描く軌道は、左足のそれより常に高い位置にある。片足だけ下駄をはいているような形だ。骨盤は左に傾き、左足を上げている時だけ水平に戻る。どう考えてもおかしいのだ。

  • これを是としておきながら、「骨盤を上手に使うように」「膝を上手に使って」と、同じ口が言うのはおかしい。どうしてそうなるのか。

  • 自動車の挙動に、加速、減速等するときに付随的に発生する、ピッチング、ヨーイング、ローリングという回転挙動がある。それぞれX軸、Z軸、Y軸を中心として回転する挙動だ。それに準ずる。課題として、奈津子の右の足底は外にローリングし、前にピッチングする傾向がある。重力や慣性重量への反力が、右足先の筋力によって得られないからだ。

  • その為に装具を履いている。「正しく前に足を出すために装具を着用する」のは理解できる。だが、なぜその装具なのか。犠牲が大きすぎる。

  • 奈津子は機能回復の先を急いでいる身の上。そして現状、いいペースで回復している。回復の2ヵ月目、一番大事な時期だ。こう書いていいのか分からないが、高齢者のリハビリとは訳が違うのだ。

  • 再三、専用の装具を作ってもらった方がいいと奈津子に話すが、一向に話が進まない。金に糸目をつけている場合ではない。いくらでも、何回作ったってかまわない。1回しか作れない法律なんてないはずだ。だが、奈津子は「作る必要性が分からない」と言う。

  • そして、奈津子はリハビリ室長にこう言われたそうだ。「装具を作ってもいい」と。回復の進度と乖離した装具を見かねたのではないかと思う。でも理学療法士は作らなかった。

  • この理学療法士に奈津子は心酔していた。そして、理学療法士は装具を作る気が、さらさら無かった。「私は急性期病院の理学療法士だから作る必要性はない」とでも思っていたのか。

  • 理学療法士は私が一番最初に話をした時だろうか、聞いてもいないのに、「装具は次の病院で作る。ここでも作れるけど調整が満足にできない」というようなことを私に言っていたような気がする。これは随分前の話である。

  • そして私は、この理学療法士に違和感を覚えていた。言葉の先々に、湿り気がある。人をからかい、自らの言葉に同調を促すようなところ。イジメっ子とか、ママ友間でのイジメ口調に通底するような、その語り口に危険を感じていた。繰り返し、繰り返し同じようなことを言う、宗教か自己啓発セミナーの勧誘のような、妙な話し方。これは、主治医の病状説明の時にも感じた違和感だ。

  • ここまでは私の疑念だった。だが、今日確信した。奈津子はマインドコントロールを受けている。「なっちゃんのこと、大好き。応援している。」笑いながら、そういっている理学療法士の目に「うそ」と書いてあるのが私には読み取れた。仮に読み取れていなくても、その言と、「作る必要がない」と言わせていること自体が、相反している。どっちか嘘か、どっちも嘘かくらいの話だ。

  • 回復初期、健全側の左側も満足に動かせていない状況から、歩行が出来るまで二人で力を合わせて頑張ってくれた。そのことには、私も本当に感謝している。

  • 奈津子は、人に絆され易いところがある。もともと怖がりなところもある。そして、私の様に表裏がある人間ではない。しかし、年齢を重ねながら、人との距離感を図る術は身に着けていたとは思う。

  • ただ、今回、いきなり極限状態から脱出しなければならなかった奈津子。それに付き合ってくれた理学療法士に深く感謝をし、同性ということもあって、不用意に距離を詰めてしまったのかもしれない。

  • 理学療法士の怠惰と傲慢が、奈津子の心理と機能回復を餌食にした。私にはそう見えている。

  • 奈津子はこの理学療法士と仲良くなり過ぎた。多分、理学療法士は、耳障りのいいことを言いながら、「今は装具を作る適期ではない」「次の病院で作ってもらえばいい」「今作る必要性は何もない」と繰り返し、刷り込みをしたのだ。

  • 奈津子を「傀儡:くぐつ」にし、自らを「傀儡使い」にした理学療法士は、自分の都合を傀儡に代弁させて、私やリハビリ室長に「今作る必要はない」と言わせていたのだ。そうしていることに、罪の意識などは無く、もしかすると楽しんでいたのかもしれない。

  • 理学療法士として、医療従事者として、人としてどうなのか。私の穿がちすぎなのか。

  • 「足底を安定させるための装具」は機能回復の過程における一つの手段。現状、こんな装具をつけている段階ではない筈だ。奈津子の大事な時間を、この理学療法士は副作用を伴う不効率な状況で過ごさせるのだ。私は、奈津子が病棟の廊下を歩く時も、検査やリハビリで移動するときも、大切な訓練の時間だと思っている。それを台無しにしているが、それを悪いとも、なんとも思わないのだ。

  • 手段と目的とを違えて、もっともらしいことを言ってふんぞり返っているその様は、主治医のそれと同じだ。だが経緯と期間と過程がまったく違う。こちらの方が悪びれてない分、闇が深い。なんでこんな人達とばかりエンカウントしてしまうのか。我が身を呪う。

  • 疑念を抱いている段階で、奈津子を説得していたが、なかなか首を縦に振らない。私はAmazonで材料を調達し、奈津子に足型だけとって欲しいと懇願した。しぶしぶ奈津子は応じてくれた。

  • この段階で、本来なら主治医に相談して働きかけをすべきだったのかもしれない。ただ、傀儡使いに、いいようにされるだけで終りそうな気がしたのだ。

  • また、これ以上正攻法で向かっても、結果的に傀儡使いが奈津子をガンガンまくしたてて、奈津子が疲弊してしまう心配もあった。

  • 12,000円程の材料と私の労働力。無駄になっても構わない。奈津子の眼を覚ましたい。物を作って足に当てれば多分、何が違うか分かるはずだ。もちろん、装具を作ったことはない。既知の技術で木靴のような形になるが、もっとスリムで軽量なものが出来ると私は確信していた。左右同じ靴。左右の足底高度を揃える。なるべく普通に近い形で歩かせたい。ただそれだけだ。

  • 夜、「医療機器ではないから、その装具を利用することはリハビリ室で許可できない。どうしても使いたいなら主治医の許可を取って欲しい。」と、傀儡使いの言い分を、奈津子から聞いた。あのヘナチョコ装具を打倒すればいい。その方がさっぱりする。そう思い、私は装具づくりに本腰を入れることにした。

  • 奈津子の夜の顔は、左右差については左口角の上がり方など 、朝とあまり変わらなかった。左頬は一日中、腫れているように見えた。

19:28


19:36


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20:59


21:30


 

デリバリー風景

奈津子の知人がたまたま撮影。夕ご飯のデリバリー時。


 

奈津子の朝昼晩ご飯







 

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