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28日目

  • 執筆者の写真: 筆者
    筆者
  • 2022年5月23日
  • 読了時間: 7分

更新日:2022年10月1日

  • 私は朝4:10頃起床。昨夜は就寝が遅くなった23:30くらいか。

  • 奈津子から6:10頃着信。やはり眠そう。昨夜0:00頃に就寝し、5:00頃に目が覚めたそうだ。まあまあ質良く眠れていそうではある。

  • 奈津子はもともと顎が外れそうなくらい大きく口を開けてあくびをする。クジラがプランクトンを捕食するために大きな口を開けて海水を飲み込むような様だ。ただ、生あくびでもなく眠たいわけではないあくび。今思うと、ひょっとしたら低血圧とか、成人女性の標準に比べ血管が細いとか、そういったことが理由で、そもそも大脳が要求する酸素に対して供給が追いつかない状態が恒常的に続いていたのかもしれない。

  • 今朝も、あくびを連発している。その欠伸は以前と同じ。ただ、間隔と頻度はまったく違う。ものすごく多い。体が随意的な活動をしている間は、右側の運動を支える脳神経細胞自体が常にディープラーニングを継続している、だから酸素をもっともっとと要求する。そんな理由があってのあくびなのだろう。

  • 明日で入院から丁度4週間経過することになる。再度、診断書を書いて貰わなければいけない時期だ。奈津子から主治医に相談してもらうことにした。

  • 朝食後の顔はなかなかいい。左目が閉じ気味、左口角上がり気味だが、朝の顔としては悪くない。昨日の朝より口角の上がり方が少ない気もする。

  • ここで仮説のまとめに入る。何とか今日、決着をつけたい。

  • 最近、奈津子が色々と手足を動かせるようになったので、通話を介して、手を動かしているところ見せて欲しいと私がお願いすることがある。奈津子は頑張ってやって見せようとするが「疲れちゃって出来ない」といって諦めることがよくある。リハビリが終わり、奈津子が夕食を食べた後、割とゆっくり通話している時にそうなる。

  • 意外とリハビリしていると使っている筋肉が筋肉痛になるらしい。この筋肉痛が「疲れちゃって」の理由の一部だと思うが、私はこう考えていた。こう考えていたからこそ仮説をひらめいた。「日中アクティブになった神経回路の接続が、使わなくなったことで細くなるのではないか。あるいは一部接続が切れてしまうのではないか。」である。

  • 現在平日、午前に1コマ、午後に2コマのリハビリをしている。その間、左の顔が良くなっていくのは観察結果のとおり。その後、夕食後から翌朝まで経過すると、また朝の顔に戻っているのだ。この左の顔の変化が、神経回路の活性の変化を可視化してくれているのではないかと私は考えた。

  • 2週間くらい前か、記憶が定かではないが奈津子とこんな会話をした。「麻痺したことないからよく分からないんだけど、動かしづらいとこ動かす時ってどんな感じで動かしてるの?念を込めるとか気合を入れるとか、むむっとか、うんって感じなの?」「そうそう、そんな感じ」。一見、分かり合えたかのようなこの会話だが、私は「すごく大変そう」くらいにしか理解できなかった。

  • その大変さをイメージしてみる。目の前に背丈ほど高く生い茂った草原が広がっている。行く方向はなんとなくわかるが、行く手を阻む草むらに難儀する。ポイントAとポイントB’という2地点。ここを行ったり来たりする。そして2回目、3回目と繰り返すたびに歩きやすくなる。ポイントの場所は分かっているし、草は倒れ、獣道らしきものが出来ていく。日が落ちその往復をやめ眠りにつく。しかし夜、草は風に揺られ、地下から水分を蓄え、倒れていた草も大方元に戻ってしまう。夜が明けて目覚めたらまた歩き出す。こうして日が経つごとに徐々に道が出来ていく。

  • この「草原の往復」と例えば「陸上競技場のレーンの往復」。その困難さと往復するスピードはかなり違う。きっと奈津子は今そんなことをやっているんだと思う。3歩進んで2歩下がる様なことを毎日やっていると。

  • 実際の大脳内の神経回路は、脳神経細胞間の形成される接合部「シナプス」が情報伝達することによって形成されている。シナプスは細胞と細胞の間を橋渡しするツールで、電気やイオンなどの力を借り情報の受け渡しをしている。その様をシナプス結合というらしい。

  • 神経回路はこのシナプス結合の数や結合の仕方で、その伝送する情報量を増減することができる。これを「シナプス可塑性」と言い、シナプスは時間とともに強化または弱化する能力を持ち、神経科学的に重要な基礎であると言われている。

  • 今、奈津子はリハビリで「むむっ」と念じ、B’で記憶・演算した情報を神経回路に載せて、色々通過して、実際のモーションを起こしている。

  • この神経回路を通過する情報を「増やしたい」「維持したい」「強くしたい」。そういった、プラス方向へのシナプス可塑性に期待し、リハビリに励んでいる。そして神経回路は実際に強化される。

  • しかし、リハビリ後、夜になると随意的な運動が減少し、マイナス方向へのシナプス可塑性が発動することで、神経回路が痩せていく。

  • 多分、これが毎日起こっている現象で、その度合いが奈津子の左の顔の腫れや歪みとなって可視化されているのだ。使うと増えるが、使わないと減る。簡単に言うとそうなる。

  • また、神経回路の物理的な位置関係・長さも少し気になる。頭の真ん中あたりにある脳幹、そして眼球奥付近、大脳の最深部。この2つは「身体・生命活動に重要な領域」であるとともに、近傍にあることで即時性や応答性が高く、神経回路も短く構成出来る。短い分、関与するシナプスの数が少なくてもよく、情報の減衰も少ない。つまり「神経回路を太く速く出来る領域」でもあると考える。

  • 脳幹の上端部、大脳との接続面。大脳基底核付近。そこにある右左の両側脳と脳幹をつなぐ2つのインターフェース。両側脳とこの2つのインターフェースは、右は右、左は左のパラレルな関係である。ちなみに脳幹で処理された情報を流す伝達路は首を下に降りていく。延髄あたりでそれが交差し本来の左脳の支配する情報を右半身、本来の右脳が支配する情報を左半身へと導いている。

  • 仮説で考察したA‐B間の神経回路は割と直線的に張ることができるがA‐B’間の神経回路は果たしてどうなっているのか。私が普通に考えるとインターフェイスが接続する左脳に一度入り、そこから「脳梁」と呼ばれる左右脳を結ぶ連絡通路的なところを通り、やっと右脳に入りB’を目指すことになる。長い神経回路。延長的に余裕で4、5倍はありそうだ。もしそうだとすると、神経回路が長くなる分、奈津子の念じる「むむっ」という力がさらに必要となる。つまり、プラス方向へのシナプス可塑性が比較的得づらい状態で、マイナス方向へのシナプス可塑性も起きやすくなる。

  • 神経回路のどこか1か所のシナプス結合が緩むと多分ドミノが起きる。血管が詰まると血流量が落ちるように、その最初のシナプスの緩みがボトルネックとなり、伝送する情報量が落ちてしまう。そうすると他のシナプスも「この帯域、確保しなくていいか」と同じように緩んでいく。その最初の緩みが起きる確率は、神経回路の延長が長くなればなるほど高くなるはずだ。

  • 書きながら気づいたが、このドミノこそが可塑性たる所以なのかもしれない。プラスのシナプス可塑性は、多分、ニューロンが「もっと情報を送らせろ」、脳幹側が「もっと情報をよこせ」とその近傍のシナプス結合の強化や別のニューロンとシナプス結合することで神経回路の帯域拡大の起点を作り、ドミネーションすることで、神経回路上とその近傍のシナプスやニューロンの活性を促し、結果的に神経回路が強化されることを言っているのだろう。そして神経回路の延長が長くなれば、ドミノしなければならない量も増える。

  • そういった意味でも「すごく大変そう」なのだ。

  • そして、また話を中断し、まとめ切れないままである。明日こそは仮説をまとめたい。今日はもう寝る準備をしたほうが良さそうだ。

  • 今日、リハビリパンツから普通のパンツに変更。

  • トイレに行く際、消灯時間以外の時間帯は独りで行ってもよくなった。

  • 便秘気味。2日1度ペースの排便か。今夜便秘薬を飲む。

  • 体重40.1kg。入院時とほぼ同じ。

  • 右肩が今日、すごく凝っていた。療法士にマッサージしてもらった。

  • 言語聴覚士からリハビリの時間以外の空いた時間に、自主的に訓練する宿題を貰った。

  • 生理がそろそろ終わりそう。

  • 杖、歩行器なしで一番軽い装具をつけ歩行訓練。階段昇降の訓練もした。

  • 右腕を伸ばした際、上腕と前腕の相対的な角度が今のところピンと真っすぐにならない。今日の診断では後20度くらいのところまで来ていることが分かった。

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リハビリ映像

 

奈津子の朝昼晩ご飯







 

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© 2022 Ambivalent Brain 奈津子の入院記録 

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