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27日目

  • 執筆者の写真: 筆者
    筆者
  • 2022年5月22日
  • 読了時間: 9分

更新日:2022年9月30日

  • 私は4:30頃起床。良く寝たが、少し疲れが残っているのか、なかなか目が覚めない。

  • 奈津子から6:20頃着信。いつものように欠伸を連発しているが、表情は悪くない。

  • 奈津子は昨夜10:30頃就寝、5:00に一度起きトイレに行った。良く眠れたようだ。最近奈津子は夕食後に21:00の消灯までの時間、眠たくても極力寝ないよう、友人とLINEをしたり、テレビやネットの動画を見たりして過ごしている。

  • 最近、うっかり忘れることが多い。今朝は奈津子の朝食に付けるヨーグルトを忘れた。昨日は奈津子のお昼ごはんの写真を撮るのを忘れていたので代わりに奈津子が写真を撮ってくれた。ちょっと気が抜けているのか。

  • たまに、毎朝飲んでいる抗凝固剤ワーファリンを飲み忘れる。一応、忘れたことに気が付く工夫をしているので、忘れていても昼過ぎごろには気が付いて飲めている。もともと私が常用している薬は奈津子に用意してもらっていた。これを飲み忘れ続けると私も脳梗塞になる可能性があるので、必ず飲まなければいけない薬なのである。

  • ここ数日、料理の手際が悪い。料理は出来ているのは出来ているのだが、上の空なのか、ちょっと時間がかかっている。多分、料理をしながら考え事をしているのだ。気が付くと右脳優位について考えていた。何も私がそんなことを考えなくてもいいのだが、奈津子の顔を見ていると考えたくなるのだ。

  • 奈津子の麻痺と反対側の顔、左顔の歪みと腫れは何によってもたらされるのか。仮説は立てたが、その仮説を肉付けするものはないか。

  • ネットで両側脳の優位性について、何か参考になるものが無いかなと探してもこれというものが見つからなかった。

  • 何の話だったかよく覚えていないが「これは生存本能によるものです」と小学校の先生が教室で話をしているときに、私は「生存本能って体のどこにあるんですか?」と質問した記憶がある。先生は胸の辺に手を当て「体の中にそういう仕組みが備わってるの」と答えてくれたが、心臓?おやおやと低学年だった私は首を傾げた。我ながら嫌なガキである。

  • 奈津子が救急搬送される前の異変。記憶に刻まれたその時の映像を思い出す。当時は酷く痛んで左顔が歪んでるのだと思っていた。だが最近、奈津子の朝の顔をじっと見ているとそうでは無かったような気がしている。顔に左右差のない四肢が動いている状態から、一転して急激に起きた右半身の麻痺と左顔の歪み。記憶の中のその左顔が歪み過ぎているのだ。まるで左の口角あたりにフックでもひっかけて左上方に引き上げているような、そんな強烈な歪みだ。

  • 感覚的には、朝の顔に「痛みの表情」を足すとその左の顔になるような気もする。そして、これこそ本能によるものなのではないかと考えた。

  • あのスピードは反射だ。そして反射と言えば脳幹。私は脳幹に関する知識がないので、素人にも分かりやすいWebページでまた浅知恵を取り込んだ。

  • 脳幹は別名「トカゲ脳」というらしい。トカゲにも人間にある脳幹と同じような器官があるためそう呼ばれている。このため脳幹はヒトが生物として進化していく過程で獲得した原始的な器官と考えられている。

  • 反射は体に生まれつき備わっている機能や能力。膝の下を叩くと下肢がポンと跳ね上がるとか、熱いものに触ると手を引っ込めるなど、こうした脳の指令を待つまでもなく無意識に起こる身体的な反応を「反射」と言うらしい。そして脳幹が主となってその反射を司る。

  • また、脳幹は心拍や呼吸、血液の循環や体温の調節など、生命を維持するための根幹の働きを担っている器官でもある。

  • そこで仮説の右脳優位判定と反射を司る器官が同じく脳幹であることに着目して少し想像を巡らす。

  • 飛行機をイメージする。両翼には1つずつジェットエンジンがついている。飛行中、右のエンジンが不測の事態で出力が低下したとする。飛行を維持するため、パイロットは即座に左のエンジンの出力を上げ、必要な推力を確保する。

  • まあ、そのままだと右旋回してしまうので、方向舵を左に向けるとかそういった操作もするのだが、ここでは頓着しない。

  • こういった感じの状況が脳で起こったら。つまり優位判定で本来の左脳側の神経回路全体の活性が低下したと脳幹が検知したら。

  • それがトリガーとなり、生命維持のための反射で、右脳の支配下である左半身の出力に対しその低下した相差分のブーストをかけたのではないか。それは、呼吸、心拍、血流と言った不随意の活動を維持するために行っているのではないか。

  • そう考えると、トカゲ脳=脳幹が、不測の事態に対応する原始的な振る舞いとして、本当に必要なのかどうかを分析しないまま、ひとまず反射で対応していたとしても不思議ではない。少し乱暴で極端だが左右出力総和を維持するために即座に作動するオートバランサー。むしろ合点がいく。

  • そして多分、脳幹は大脳との神経回路で伝達している情報を、最もソリッドでシンプルな情報に変換・分配し、錐体路などの情報伝達路に向けて接続している。左の顔のある左半身、その一側の出力全体のゲインを上げることは容易いはずだ。

  • 話がまとまっていなくて悔しいが、残りは明日に譲ることにする。

  • 奈津子は昨日に引き続き、週末の宿題として自主的にリハビリを行った。宿題は10分のメニューを2つで1セットとして、1日2セットしているそうだ。内容的には言語聴覚と作業療法的なものがメインらしい。言語聴覚的には見ている限り発話自体は既にほぼほぼ元の通り出来ているので、多分発話に問題はないと思われる。ただ右の口角、頬、目じり付近の表情筋のコントロールがまだ十分学習できていない。にっこりすると、右の口角も動くのだが、左がその3倍くらい動く感じでバランスが悪い。そういったことも含めて言語聴覚士に訓練してもらっているという。左口角の過剰な動きは、もしかすると私の仮説による反射のバイアスがかかっていることも影響しているのかもしれない。

  • それとは別に、看護師に見守ってもらいながら歩行器を使って病棟の廊下を2周半した。

  • リハビリの合間、数人の友達とLINEで会話したと嬉しそうに言っていた。

  • 奈津子の顔の左右差が今日は少なかった。朝から消灯まで、左瞼の腫れはほとんど無い状態が続いた。ただ眼球の面積的には若干左が少ない程度に違う。左の口角は朝ちょっと上がっていたが、昼になると少し下がり、夕方にはほぼ右の口角と同じ高さになっていた。

  • これには奈津子自身も私もちょっと驚いている。嬉しい変化だ。昨日左右差が結構あったので、なぜ今日好調なのかよく分からない。明日も今日のような左顔ならと、それが続いていくことに期待している。

  • 今日の夕方の奈津子の顔の点数は94点くらいか。

  • 心配していたしゃっくりは今日は無かった。

====8月6日追記==== この時、こんなことも考えていた。私の想像なので読み飛ばしてもらって構わない。備忘録として記す。

脊椎動物の脳は、どの生物種でも基本構造は同じで、「脳幹」「小脳」「大脳」から成るとされている。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、霊長類はざっくり言うと同じ構造を持つことになる。ただ、大脳の大きさや機能が、大体この序列で決定的に違うようだ。基本構造が変化するのではなく新しい機能が付け加わり進化したらしい。

また、脊椎動物は人間と同じく、右半身が左脳、左半身は右脳が制御している。特に左脳は、日常的な行動の制御に特化していると考えられている。たとえば、摂食行動は多くの脊椎動物で身体の右側への偏りがみられるそうだ。簡単に言うと「多くの脊椎動物は、右利き」らしい。

そして、左右の両脳が役割分担し、情報処理を並行して行う。その度合いは、大脳の発達するほど大きくなる。左右の脳に差があればあるほど、役割分担がし易くなる。すると、同時に複数の行動が可能になり、それだけ生存競争で有利になる。こうした理由から、脊椎動物の多くに脳の左右の機能の違いが受け継がれていくことになった、と考えられている。

ここまでが、前提の知識。両側脳の発達は、より高度な情報処理と行動の為に果たされた、と言えるのだと思う。私が考えたのは、オートバランサー機能の成立の背景である。

4億6000万年~2000万年前ごろに、顎口類が誕生し、生物に顎が出来た。魚類の段階で。摂食の為にある口が一つになった。3億7000万年前位には、海中で誕生した脊椎動物である魚類の一部が両生類となり、陸上へと進出した。両生類は大脳と小脳の割合が小さく、本能や反射を司る脳幹が大部分を占めていたそうだ。陸上で生活するようになった両生類の一部は、『羊膜』を獲得したことによって地上での繁殖を可能とした。この辺りから、地上に棲む生物が現れ始めたことになる。仮説で考えたオートバランサー機能。もし、それがあるのであれば、進化という長い時の流れの中、この頃生まれたのではないか。私は、そう想像した。人間の生体に残る、反射=本能というのは、進化の過程で陸上行動を始めた両生類や爬虫類の時代に、四肢で歩行していた頃に多く成立したのではないか、と。

生物学とか進化とかに聡くない私だが、ぼっちだった幼少期、当時の自宅周辺で様々な昆虫やヤモリ、イモリ、カエルなど身近な生き物と戯れていた。今では怖くて触れもしないが。そんな時に「トカゲの尻尾切」を何度か観ている。掴まえようとすると、尻尾がとれてウニョウニョ動く。そして、忽然とトカゲ本体は姿を消す。「あれ、どこに行った」と。

この尻尾を切ることを「自切」と言うらしい。トカゲの尻尾は、切れることを想定した構造になっている。切れた後、本体側では穿刺時の駆血帯よろしく筋肉を硬直させることで止血する。切れた尻尾はデコイとなり、敵をひきつける。この尻尾切の一連の動作は、トカゲの反射で行われているそうだ。ちなみに、トカゲの中には自切しないものもいるらしい。

戦略的撤退のお手本のような手管である。現存するトカゲが進化の過程で身に着けた行動だ。反射であるから、その手順は脳幹か脊髄辺りにインプリントされていることになる。上位か同格の捕食者に対峙した際や、背後から強襲された際の、最後の手段だったのだろう。「喰うか喰われるか」、ぎりぎりの生と死が繰り広げられる「原始の森」。そんな所でトカゲの祖先が身に着けた反射行動なのだろう。

こんなことを想像した。やはり「原始の森」で、トカゲのような生物が捕食されそうになったとする。頭部外傷を負い、左脳に著しいダメージを被ったとする。その生物は退路を探し、もんどりうってでも、回避行動に出る必要がある。もし、退路が無ければ「窮鼠猫を嚙む」ように反転攻勢に打って出る必要がある。いずれも、健在な右脳系統を使って何とか対応しなければならない。その際の力の依代が、このオートバランサー機能だったのではないか。

「生存し、クローンを残す」という利己的遺伝子的な視点で考えてみても、少し納得してしまうのだ。「生きていればこそ」という割り切りが、尻尾切と同様、そこに感じられるからだ。

====追記終わる====

08:36


13:17


15:42


18:24


 

奈津子の朝昼晩ご飯

朝ヨーグルトをつけ忘れたようだ。







 

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