18日目
- 筆者
- 2022年5月13日
- 読了時間: 4分
更新日:2022年9月29日
奈津子は昨夜はまあまあ寝れた。前の晩より良く眠れたと言っていた。リハビリで疲れ、自己肯定感と否定感のバランスもいいほうに振れているのか。不安感が薄れ目標に向かって邁進する充足感が睡眠に繋がればいい。
表情はいい。数日前まで、ずっと何かに打ちのめされているような倦怠感を漂わせていた。食後は食べ疲れからか、おなか一杯になると少し苦しくなるようなところがあった。その様子がだんだんと無くなっている。
私は最近、ボーっとしている。うっかりして何かを忘れたり、忘れそうになったりする。朝食にヨーグルトをつけて差入れするのを忘れていた。奈津子のご飯も、朝、炊き上がるようにセットしておくべきだったのに、それも忘れていた。朝食は、辛うじて冷凍庫にストックしていた、混ぜご飯のおにぎりに助けられた。
朝食後、体を起こしている状態で通話。瞼にやはり左右差があるが、食後にしてはいい表情をしている。ちなみに全部食べたそうだ。
排便もだいぶん慣れ、時間もさほどかからなくなったそうだ。思いのほか上達が早い。
手もだいぶん動くようになった。グーパーはできるが、個々の指単独での動きはこれから。
ベット上で、瞬間的に上体を起こし、物をとる術を会得した。このことで身近な物を手もとに取れる範囲が広がったと、奈津子は嬉しそうに言っていた。
今日のリハビリでは、右足に一番軽い装具をつけて杖なしで歩けたそうだ。
奈津子の携帯の不具合を何とかしたいと思い、私は携帯ショップを訪ねた。状況を説明すると、データの速度制限にかかっていたことが判明。契約変更の手続きをしても適応が翌月になると言われ、悩んでいる時間が惜しかった私はWifiルーターの契約をした。3か月縛りで7月末まで解約できない。本体はポイントで買い、7月末までの利用料13,000円程度支払う前提。いろんなレンタル業者があるので少し勉強しかけたが、なかなかどれがいいのか分からなかった。時間を買ったつもりで即決した。
奈津子に快適なインターネット環境を与えることが出来た。ビデオ通話も時折乱れるが動画でやり取り出来そうだ。また奈津子がリハビリのない時間にYouTubeなどの映像コンテンツを楽しむことができる。ついでに私がお風呂の中でYouTubeを楽しむために使っていた中古タブレットを奈津子に差し入れた。最近、毎朝シャワーだけで湯舟につかることもないからだ。
奈津子の夕食を病棟に届けた際、若い看護師に声をかけられた。「あのお弁当は毎食旦那さんがつくってるんですか。」「ああ、そうですよ。」「なんか料理人みたいですね。」と。「あはは」とでも言っておけば良かったのだろうが口を突いて出たのは「今まであんな料理は作ったことはなかったんですけどね。」という言葉だった。少し注意力を欠いた頭は、本音を口にした。
料理は確かに毎日作っていたし、奈津子の弁当も作っていた。だが、いずれも簡単なもの。少なくとも副菜やフルーツを交えた弁当はほとんど作ったことは無かった。きれいとか、おいしいとか、そう言われて嬉しいのは嬉しいが、それが目的の弁当ではない。奈津子の血肉になる、私の危機感を帯びた弁当なのだ。良質なたんぱく質と新鮮な野菜。なるべく多くの種類の食材を入れ、左手に持つフォークで食べられるものを。栄養管理的に少しアンバランスでもいいし、格好だってどうでもいい。奈津子が食べてくれたらそれでいい。そんな料理だ。
私が今、病気に見舞われたり死んでしまったら、病院食が食べられない奈津子の食事をどうするのか。持続可能な名案がないのだ。都会ならウーバーイーツとか出前館とかのデリバリーサービスをうまく使うことも考えられるが、この地域ではそういったサービスはない。受けてくれるかどうか分からないが院内のレストランや仕出し屋に特注するとか、奈津子の母に作ってもらうとか。そういった方法をとらなければ多分立ち行かないはずだ。それを考えると頭が痛い。
就寝前、奈津子の左目が痒そうだった。やはり少し瞼が腫れていた。「明日、休みの日だから、部屋での過ごし方を考えないといけない。うまく座る姿勢をとる方法も考える。」と奈津子。リハビリが少ないのでやれることを色々考えたいのだろう。「ポータブルトイレにいけるんなら椅子にも座れるんじゃない。看護師にお願いしてベットサイドに椅子を置いてもらって座れるか試させて貰ったらいいよ。」と助言すると、奈津子はやってみると言っていた。
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リハビリ映像
奈津子の朝昼晩ご飯
※朝、ヨーグルトをつけるのを忘れて、昼につけた。
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